自律展開魔法譚

-Actualized by Herself-

壕野一廻

よい物語は、よい魔法になる。

コミックマーケット108 二日目 2026年8月16日(日) 西 と-21a プレビュー版頒布

Storyあらすじ

物語が、現実に干渉する力――魔法――となる世界。その能力はもはや魔法使いたちの特権ではなく、誰しもの手元に商品として行き渡っている。

そんな魔力による産業革命の時代、革命の申し子であるリターリア・ナラブリートは、亡き両親の屋敷でひとり手ずから魔法を紡いでいる。「よい物語こそが、よい魔法になる」――そんな時代遅れの、夢見がちな信念を胸に抱いて。

小さな仕事を終えたある夜更け、屋敷の扉を叩いた一人の少女が、閉ざされた日常に、思いも寄らぬ物語をもたらすことになる――。

Excerpt試し読み

物語が世界を変える。それはきっと現代に始まったことではないけれど、今や物語は人の心を通さず物理的に世界に干渉するようになった。

そんな物語の溢れた街中を一人の少女が歩いている。淡い色のシルエットは強い生命力を感じさせるものではなくて、どちらかといえば幽霊めいた儚さを感じさせる。街ゆく人が、常識から乖離した彼女の出で立ちに注意を向ける様子もないのは、ひょっとすると、人々にとって彼女が幻か何かのように思えたからなのかもしれない。

少女にとって、この街は実に騒がしいものだった。少女は自分のことを何も知らない。どこから来て、どこへ行くのか。何故自分がここにいるのか。ただ、他の通行人たちが特段この喚き立てる物語の群れを気に留める様子がないことから、自分が物語に敏感な存在なのだということだけはわかった。

どこに行っても同じような物語の繰り返し、ちょうど、それはこの街を舗装する石畳のよう。それが少女には苦痛で、逃れるようにひたすら歩き続ける。

夜が更ける。街の灯りが消え始め、彼女が感じる騒がしさも薄れていく。安堵と疲労に立ち止まった少女は、ふと正面の小さな屋敷に目を留めた。静寂が広がりつつある街の中で、その屋敷から独特の物語の気配を感じた。それは、他のところで喚き立てられているような、単調で退屈で、しかも騒がしい物語ではない。何か、もっと魅力的なものだ。少女は、自分が目指していたのはこの場所だと直感した。ふらふらと屋敷へと歩み寄り、残された力で扉を叩いた。

World世界観

物語が直接現実に干渉する力は古くから使われてきたが、その時々に専門家が紡ぐものであって、社会に大きな影響を与えられるほどの力はなかった。物語とは、第一に人の心を動かすためのものであり、魔法の力は、あくまでそれに付属するとびきりの奇跡に過ぎなかった。

「自己展開魔法」の発明が、それを変えた。専門家の紡いだ物語を固定し、複製し、誰でも使えるようにしたのだ。物語は、もはや人の心ではなくて、社会を動かすための力になった。物語に突き動かされて、社会は急速に豊かになりつつある。

けれど、その豊かさの源である「物語の力」は、いま静かに翳りつつある。

Information頒布情報

頒布物
小説『自律展開魔法譚 -Actualized by Herself-』プレビュー版(A6判・20ページ)
頒布価格
200円
イベント
コミックマーケット108 二日目 2026年8月16日(日)
スペース
西地区 “と” ブロック 21a
サークル
河城重工特車事業部